ろぐりずむ

主には宝塚の感想。他のミュージカルも観ます。

【東宝】『エリザベート』(2016) 感想〜花總まりさんのシシィは、まるで皇后そのものだった

東宝版『エリザベート』、観劇してきました!待ちに待ったエリザベート。前回は帝国劇場だけだったので、大阪に来るのを楽しみに待っていました。その感想です。

★9月25日 13時半 3階3列 梅田芸術劇場メインホール

■宝塚版との違い

現在、東京宝塚劇場でも上演されているこの作品。観劇し終わって感じるのは、宝塚は「夢」で、東宝版は「現実」を表現しているということだ。

今回、東宝版を観て、性病についてやマデレーネの衣装、ヒトラーに扮したルキーニ、最後死を迎えるルキーニなど、かなり生々しく表現されているように感じた。

その点と、史実に沿っている点も注目したい。シシィの父・マックスはかなりの女好きだったこと、そしてルドルフは剣よりも勉強が得意な子供だったそうだ*1

■舞台装置について

真ん中のモニュメントは、「死への入り口」であり、「自由への入り口」だった。

シシィはあのモニュメントを登り、ずり落ちていく。ルドルフは亡くなった後、あの棺に入る。そしてその棺にシシィはすがり付き、泣く。最後に、シシィとトートがそのモニュメントの前で立って終わる。

1つの装置を何度も使い、たくさんの魅せ方を表現してくれる舞台装置。観ていてとても楽しかった。

■フランツについて

田代万里生さんのフランツ、素晴らしかった。皇帝の品があり、かつシシィを一途に愛しているという俗っぽさもあって、感情移入できるフランツだった。

どの時代を観ても、いい声。でも、歌でなくお芝居に私は惹かれた。特に老年期。老年期のフランツは髭や帽子があって表情が見えにくいのだが、それを吹き飛ばすような表情作りだった。

■シシィについて

花總まりさんのシシィ。私はこの方のシシィが見たくて、すごく楽しみにしていた。説得力のあるシシィだった。本当にシシィが生きているかのようだった。

皇后エリザベートはどのような人だったのか、私は本や舞台でしか知ることができない。でも、シシィの一生はこの舞台にあるのだと感じた。

おてんばな少女、甘酸っぱい恋をしている女性、母、そして皇后。どれも自然で、生きているかのようだった。そして、ドレスの着こなし。三色旗のドレス、鏡の間のドレス。「美しい」この言葉しか出ない。

精神病院の場面について

シシィを取り巻く場面の中で、私が好きなのは精神病院の場面である。孤独を打ち明けられないシシィが、精神病院の患者に打ち明ける。

代われるのなら、代わってもいいのよ。
あなたに耐えられるの、この孤独が。

このように歌うシシィは、高貴で、自分の弱みを晒しているのに、強い。「孤独に耐えうる強さ」を持っている花總さんのシシィ、本当に観ることができて良かった。

■あとがき

余談だが、私は前回花總さんを見たのが『モーツァルト!』のナンネール役だった。そのイメージだったので、今回の歌唱力の上げ幅にはびっくり。何歳になっても、伸び続ける。そんな役者さんたちが集まるミュージカルを、これからも観続けたい。

*1:『エリーザベト 美しき皇妃の伝説』より