【四季】『ウェストサイド物語』(2016) 感想〜マリアとアニタは、失うものが多過ぎた
劇団四季『ウェストサイド物語』を観てきました。高校のとき、先輩が演じられていたこの作品。あのとき、この作品から、再び舞台に魅せられました。
★3月29日 18時半 2階7列 四季劇場[秋]
『ウエストサイド物語』は現代版『ロミオとジュリエット』であることはよく知られている。私は事前に本作のあらすじを見たことと、ロミオとジュリエットを見たことがあるからので、すんなりと作品に入り込めた。
まず、目を引くのが全体のダンスシーン。上記の看板にもあるようなポーズ、男性の力強いダンスに女性の色っぽいダンス。そしてアクロバティックな振りが多々あり、見とれてしまった。
そして、お話が進むにつれ、私はマリアとアニタに心惹かれるようになったのであった。
■マリア役、山本紗衣さん
歌声もさることながら、お芝居が素晴らしかった。
マリアはアメリカに来て、ダンスパーティーでトニーと出会う。それまであまり遊んだりしてなかったから、トニーと出会った時、とっても嬉しかったんだろうな。
特にトニーを「アントン」と呼ぶ場面。トニーは愛称で、本当は何て言うの?と呼ぶシーン、大好き。2人の純愛を感じられる場面だ。
そんなトニーが人を殺し、殺された。しかも兄を。それでもトニーを信じて駆け寄るマリアの姿は、もうトニーが世界の全てだったのだろうな。トニーを失ったマリアは、全てを失ったからこそ、次のようなセリフを言ったのだろう。
「あと何発残ってるのチノ、あと何発あればみんなを殺せるの、そして私も。トニーはみんなに殺されたのよ」
このセリフを言う時のマリアの豹変ぶり。喪失した顔。私は忘れない。
■アニタ役、岡村美南さん
この方のダンス、歌、そしてお芝居は素晴らしかった。
- ダンス
ダンスは、けっこうスペインのフラメンコのような振りが多かった。その中でのスカート捌きがとても印象に残っている。「America」のときは、かっこ良かった。スカート捌きはいかに素早く、そして美しく見せるかが難しいところだが、それを難なくこなしていてすごい。
- お芝居
アニタは1幕と2幕で、キャラクターががらっと変わる。
1幕はベルナルドと愛し合う、艶やかな女性。その中でも下品ではなく、かっこいい女性に見せるのが素晴らしい。そして2幕。アニタはマリアに頼まれて、トニーの店に行くのだが、そこで心にも体にも傷を負ってしまう。そこでのセリフ。
「これからあんた達が道で血を流していても、唾を吐きかけてやるわ」
すごく印象的だった。少なくとも、お店に行くまではマリアのためを思って、そこまでジェッツを憎んでなかったように考える。でもあのようなことがあってから、もうジェッツを憎むしかなくなった。そのときの豹変ぶりが哀しくて、やり切れない表情だった。
■あとがき
失ってから分かるものがあると言うけれど、失うものが多すぎた。
死がもたらしたのは哀しみだけではない。終わることない憎しみ、壊れた心。もはや修復不可能なところまで到達していたのだ。
救いようのない物語だったけど、魅力的に感じるのはなぜだろう。それはやはり、1幕と2幕の差だと考える。
今年の夏、全国ツアーがあるので、また行きたい。こんな素敵な作品に出逢えて、幸せだ。
2016.7.18追記
2回目の感想はこちら→