ろぐりずむ

主には宝塚の感想。他のミュージカルも観ます。

【宙組】『神々の土地』(2017) 感想 〜歴史が目の前で起こっている、重厚感溢れる物語

宙組公演『神々の土地 〜ロマノフたちの黄昏〜/クラシカルビジュー』観劇しました。ついにやって来たまぁ様(朝夏まなとさん)のサヨナラ公演、今回はお芝居の感想です。

★9月17日 15時 2階10列 宝塚大劇場

幕が下りた後、ずっしりと重厚感が残る作品だ。まるで歴史の1ページが自分の前で起こっていたかのよう。宝塚というのは夢の世界だからこそ、「現実」としては受け止められない作品もある。けれど、この作品は違った。教科書では「ラスプーチンを暗殺した人物」「ロシア最後の皇帝」だけで表現される人物を、脚本演出、そして演者の力で、人物に納得感を持たせていた。

■演者の力

オリガ演じる星風まどかさん、ニコライ演じる松風輝さんの2人がとっても心に残った。

〜オリガ

実質的なヒロインはイリナだけれど、今回のお話の中心にいたのはオリガだと感じた。そして、皇女として・一人の女性として、苦悩する姿が印象的だった。

市民の皇族に対する思いを初めて知った時。ドミトリーがある作戦に加わるのを知った時。それをアレクサンドラに伝えた時。幼心に、ドミトリーの気持ちが自分には向いていないと気付いた時。

オリガの「正義感」「純真さ」で全てその行動が納得が行った。星風まどかさんは、この2点においては群を抜いていると思う。お芝居ももちろん、清らかな歌声も素晴らしい。これからどんな舞台が観れるのか、楽しみ。

ニコライ2世

お芝居がとても魅力的なまっぷーさん(松風輝さん)。私は何冊かロマノフ王朝に関する本を読んだのだけれど、ニコライ2世は「家族思いの優しい父親、その優しさ故、混乱するロシアを治める皇帝には合わなかった」という記述が多く見受けられた。

そして、作中、ニコライがこうドミトリーに話している。「もしきみがオリガを愛しているのなら、わたしはきみに次の皇帝をお願いしてもいいと思っているんだよ」。家族思いで、優しくて、でもちょっと決断力に欠けていて。オリガたちにとってはすごくいいお父さんだったのだろうな。

そして、哀愁漂う感じもすごく醸し出されていた。自分には皇帝は務まらないこと・国が混乱状態になっていてどうにもならないこと・自分は市民たちの敵であること、を気づいていたけれど、でも子供たちには言わない。混乱させない。それも優しさだよね。

■あとがき

「歴史が目の前で起こっている」、まさにこの一言に尽きる。市民だから、皇族だから、とカテゴリー化して歴史を見てしまうことも多いのではないか。けれど、元々はみんな1人の人間である。何を思い、何を感じて、どう行動したか。「自分の信念を信じ、運命に翻弄される」人々の、儚く美しい物語だった。