【四季】『ウェストサイド物語』(2016・全国)感想 〜人は脆くて弱いからこそ、魅力がある
劇団四季、2回目の『ウエストサイド物語』観劇しました。色褪せない作品って、きっとこの作品を言うのだと思います。2度目でもたくさんの発見、そして感動がありました。
★7月17日 2階 2J列 京都劇場
前回観た時は、アニタ役の岡村美南さんに釘付けになり、この方を陰ながら応援することを決めた私。しかし不思議なことに、好きな方ってうまく感想が書けない。そのため、全般的な感想を書いていく。
■天性のヒロイン力
やっぱりこの作品の主役って、マリアだ。
今回演じていた山本紗衣さんは、天性のヒロイン力を存分に発揮していた。
舞台って不思議なもので、言語化できない「華」が恐ろしいほど心に訴えかける。それはビジュアルから来るものかもしれないし、実力から来るものかもしれない。
山本さんは、歌声はもちろん素晴らしいが、持ち前のヒロイン性が頭一つ抜けていると感じる。いるだけでぱっと華やぐ舞台、知らず知らずのうちにマリアとして感情を移入してしまうのだ。
■振り幅の大きさ
この作品の魅力って、おそらく「ハッピーエンドの頂点→最も悲しい結末」という、振り幅の大きさにあると思う。
1幕。年頃の女の子が夢見るのは結婚だ。マリアがトニーのことを自身の両親に伝えるシーンは本当にかわいかった。この後の結末がわかっていても、どうかこの幸せが続いてほしいと願った。
そして2幕。命が失われるという悲しい結末だが、その中にも希望があった。それは役者の方たちが白いお衣装で踊る場面である。
この場面は、現実には存在しなかった世界。シャークもジェッツも戦わず、お互い手を取りダンスをする。
あのシーンの意味を私なりに解釈すると、人物たちはもはや戻れないところまで戦いが来ていることを悟っていたのではないだろうか。
最初は自分たちの「世界=縄張り」争いのために戦っていた。けれど、もはや自分たちの仲間が失うことになるなんて、想像もしなかっただろう。
■作品のメッセージ
この作品のメッセージとはなんだろうか、それは「憎しみは辛い結末を生む」ということ。そしてもう1つ、「人間は脆くて弱い」ということである。
決闘の場面、お互いのリーダーは殴り合いと決めていたが、もしもの時のためにナイフを携帯していた。そしてチノは、ピストルを受け取り実際に使った。
武器に頼り、人を肌の色でカテゴライズして自分の居場所を確立する。そうしないと自分が崩れてしまいそうで、どうしようもなくなるからである。
■あとがき
「トニーはピストルじゃなくて、憎しみに殺されたのよ」
このマリアのセリフが印象的だった。
人は脆くて弱い、だからこそ魅力的なのだと感じる。この作品は、何回でも観たい作品で、おすすめしたい作品となった。